プレス加工からレーザー加工へ。蝶番の大量生産における歩留まり改善とコスト最適化

| 素材 | SUS304 |
|---|---|
| 厚み | 2.5 |
| 枚数・個数 | 1000枚 |
ポイント
精密板金加工において、蝶番(ヒンジ)は代表的な製品の一つです。
今回は、大量注文をいただいた蝶番の加工事例を通じて、コストダウンと品質維持を両立させるための工夫をご紹介します。
### 課題:蝶番特有の形状と「歩留まり」
蝶番は、軸を中心に回転する「凹(メス)部分」と「凸(オス)部分」が組み合わさって一つの製品となります。
大量生産において最も重要な課題の一つが「**歩留まり**(材料の利用効率)」です。材料費はコストに直結するため、いかに無駄なく材料から部品を切り出すかが鍵となります。
### 対策1:凹凸を組み合わせる「ネスティング」
そこで重要になるのが「**ネスティング**(材料取り)」です。
蝶番の凹部分と凸部分は、ちょうどパズルのピースのように、互いにはまり込む形状をしています。CAD/CAMシステムを使い、この凹凸形状がぴったりと組み合わさるように材料(鋼板)上に配置します。
これにより、部品間の無駄なスペースを最小限に抑え、一枚の板から取れる製品数を最大化。
大幅な歩留まり向上を実現しました。
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### 対策2:「共通線切断」の検討と「個別切断」の採用
ネスティングで歩留まりを改善した後、次に検討するのが「加工時間の短縮」によるコストダウンです。
#### 共通線切断(シェアカット)の可能性
最も加工時間が短くなるのは、隣り合う部品の境界線を一本の線で切り抜く「**共通線切断**」です。
加工距離が最短になるため、レーザー加工の時間を大幅に短縮できます。
しかし、ここである問題が浮上します。
#### 品質維持のための「クリアランス」
レーザー加工の切断幅(カーフ幅)は、一般的に**約0.5mm**程度です。もし共通線で切断した場合、凹部と凸部の隙間(クリアランス)も0.5mmになってしまいます。
しかし、蝶番がスムーズに動作するためには、**通常1mm~2mm程度のクリアランス**が必要です。0.5mmでは隙間が狭すぎ、組み立てが困難になったり、動作不良を起こしたりする可能性が非常に高くなります。
#### 結論:品質を優先した「個別切断」
目先の加工コストダウンを優先して(共通線切断)、不良品を出すわけにはいきません。
そこで今回は、必要なクリアランス(1mm~2mm)を正確に確保するため、共通線切断は採用せず、**凹パーツと凸パーツをそれぞれ別々に切断する**方法を選択しました。
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### まとめ
今回の事例では、以下の2点を両立させました。
1. **歩留まりの最大化**:凹凸形状を利用した精密なネスティング。
2. **品質の確保**:製品機能に必要なクリアランスを担保するため、あえて「個別切断」を選択。
単純なコストダウンだけでなく、製品が「蝶番」として正しく機能することを最優先にした加工方法の選定が、最終的な顧客満足と信頼につながる重要なポイントとなりました。







