SUS304 0.5t フランジ形状のレーザー切断:薄板・細幅リングの歪み対策

ポイント
SUS304 0.5t フランジ形状のレーザー切断:薄板・細幅リングの歪み対策
今回は、ステンレス(SUS304)の薄板精密レーザー切断の事例をご紹介します。
一見すると単純な形状に見えますが、実は「熱歪み」と「工程のバランス」について、少し気を使うポイントがある製品です。
### 1. 製品スペックと加工内容
* **材質**:SUS304(ステンレス)
* **板厚**:0.5mm
* **形状**:フランジ形状(リング状)
* **サイズ感**:大口径リング、幅8mm
* **加工詳細**:幅8mmの中にφ4の小穴を24箇所加工
### 2. 加工のポイント:細幅に対する穴あけ
今回の形状は、決して難易度が極端に高いものではありません。しかし、**板厚0.5mm**という薄さに加え、**幅8mmのリングに対しφ4mmの穴をあける**という点に注意が必要です。
穴の直径が4mmということは、穴の両サイドに残る材料はわずか2mmずつ。
ここにレーザーの熱が加わるため、連続して加工を行うと熱がこもりやすく、微細な歪みにつながる恐れがあります。そのため、ピアシング(穴あけ)の順序や熱影響を考慮しながら、慎重に加工を行いました。
### 3. 「歪み」と「公差」のジレンマ
通常、弊社のレーザー加工における一般公差は**±0.2mm程度**とご案内しています。
しかし、今回のような「大口径」かつ「細幅(8mm)」のリング形状は、加工中に内部応力が解放されることで、製品自体が楕円に歪んだり、寸法が出にくかったりする傾向があります。
#### 寸法精度を最優先する場合の策
どうしても幾何公差(真円度など)や寸法精度を厳しく管理したい場合、一つの解決策として**「リングの中に十字のブリッジ(支え)を残して切断する」**という方法があります。
内側をくり抜かずに十字に材料をつなげておくことで、加工中の製品の剛性を保ち、熱や応力による変形を物理的に抑え込むことができます。
### 4. 工程全体でのメリットを考える
しかし、この「十字ブリッジ」にはデメリットもあります。
> **「後工程でブリッジを切り離し、その切断面を仕上げる手間が発生する」**
ということです。
レーザー加工単体での精度は上がりますが、その後の手仕上げ作業が増えれば、トータルのコストやリードタイムは増加してしまいます。
「そこまでの精度が必要なのか?」
「後工程のコストに見合うメリットがあるのか?」
このバランスはお客様の用途によって異なります。今回は、あえてブリッジ等の補助は使わず、レーザー加工機の設定とノウハウのみで歪みを最小限に抑え、コストと精度のバランスが取れた良品として納入いたしました。
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### まとめ
薄板のリング加工は、単純なようでいて、材料の挙動をよく知る必要がある加工です。
弊社では、図面の公差を守ることはもちろん、「その公差を出すために最適な(無駄のない)加工方法は何か」を常に検討しています。
ステンレスの薄板加工、変形しやすい形状の切断でお困りの際は、ぜひ一度ご相談ください。







