極薄シムプレートの材質選定基準と、知っておきたい「枚数とコスト」の真実

ポイント
極薄シムプレートの材質選定基準と、知っておきたい「枚数とコスト」の真実
精密機械の組み立てや治具の高さ微調整に欠かせない「シムプレート(スペーサー)」。0.1mm〜1.0mmといった極薄板の領域では、材質選びが製品の性能だけでなく、
加工コストや納期にも大きく影響します。「どの材質を選べば最適なのか?」「材質によってコストはどれくらい変わるのか?」といった
実務上の疑問にお答えするため、代表的な4材質の選定基準と、レーザー加工におけるコストの構造を詳しく解説します。
1. シムプレートで使われる代表的な4材質の選定基準
シムプレートの材質は、使用される環境(防錆性)、負荷(強度)、機能性(磁気・導電・滑り)によって使い分けられます。それぞれの特徴は以下の通りです。
| 材質 | 耐食性 | 強度・硬度 | コスト | 主な用途と選定の決め手 |
|---|---|---|---|---|
| SUS304 | ◎ 優秀 | ◎ 高い | △ やや高 | 環境を選ばない万能型。水回り、屋外、医療・食品機械、クリーンルームなど。迷ったらこれと言える標準材質です。 |
| SPCC | △ 要防錆 | ○ 標準 | ◎ 安価 | コスト最優先。油密されたギアボックス内や、防錆処理が前提の屋内設備など、サビのリスクが低い密閉環境向け。 |
| 真鍮 | ○ 良好 | △ 柔軟 | ☓ 高価 | 非磁性・通電性・摺動性。磁気を嫌うセンサー周辺や、部品同士が擦れ合う駆動部のスペーサーに最適。 |
| アルミ | ○ 良好 | △ 低い | ☓ 高価 | 軽量化・相手部品の保護。極めて軽く、金属としては柔らかいため、締め付け時に馴染んで高価な本体部品を傷つけません。 |
2. 極薄レーザー加工における「枚数とコスト」の意外な関係
設計や購買の現場では「SPCC(鉄)は安く、SUS304(ステンレス)は高い」という一般的なイメージから、コストを意識してSPCCを選定されるケースが多く見られます。しかし、レーザー切断による極薄シム加工においては、この常識が必ずしも当てはまらないケースがあります。
◆ 少数(小ロット)生産の場合:材料コストの差はほぼゼロ
試作や数枚〜数十枚といった小ロット生産の場合、製品1枚あたりに含まれる純粋な「材料代」の占める割合はごく僅かです。
全体のコストの大部分は、図面のデータ処理やマシンのセッティングといった「段取り費用(固定費)」が占めるため、枚数が少ない場合は材質による材料コストの差はあまりなくなります。
◆ コスト的には「切断機会の多いステンレス」が有利
加工現場の視点で見ると、SUS304は最も頻繁に切断される「超高稼働材質」です。常にマシンにセットされていることが多く、
端材の有効活用もしやすいため、製造効率(段取りの良さ)の面からコスト的には切断する機会が多いステンレス(SUS304)が有利になります。
逆に、極薄のSPCCは在庫の保有状況やマシンの条件出しの頻度によっては、かえって段取りの手間が増え、小ロットではステンレスより割高になってしまうことすらあります。
【コスト比較】大ロット(1,000枚以上)におけるSPCCとSUS304の差
もちろん、数量が1,000枚以上の大ロットになってくると、材料の総重量が増えるため、ベースの材料単価が安い鉄系のSPCCが安くなる場合もあります。
しかし、それでも極薄シムプレートの場合、1枚当たりのコストに換算して比較すると、その差はわずか「数円」のレベルに留まります。
そのため、量産時であっても「サビ対策のための防錆油の塗布や、その後の管理の手間・リスク」を考慮すると、数円の差を許容してでも最初から防錆性に優れたSUS304を選定しておく方が、トータルの管理コストや品質安定性で有利になるケースが非常に多いのです。
3. まとめ:最適なシムプレート選びのために
極薄シムプレートの材質選定におけるポイントをまとめます。
- 小ロット(数枚〜数十枚レベル):材質によるコスト差は無視できるため、耐食性と強度に優れ、加工効率も高いSUS304を最優先で推奨。
- 特殊な機能要求:磁気対策や滑り重視なら真鍮、軽量化や相手部品の保護ならアルミを機能軸で選択。
- 大ロット(1,000枚以上):SPCCが安くなるケースもありますが、1枚あたり数円の差であるため、後工程の防錆管理コストを含めて総合的に判断する。
当社では、0.1mmから1.0mmまでの各種極薄金属(SUS304、SPCC、真鍮、アルミ)を常時ストックし、レーザー加工による1枚からの高精度なシムプレート製作に対応しております。数量やご予算に応じた最適な材質のご提案も可能ですので、設計・試作の段階からお気軽にご相談ください。







